RGFエグゼクティブサーチジャパン(以下「RGF」)の採用支援を通じて、株式会社AbemaTVにご転職、キャリアップを実現されたデータサイエンティストの松崎様。最初の出会いから採用に至るまでのエピソード含め、担当コンサルタントの倉地と対談の機会をいただきました。
新天地に求めたのは、ビジネスを発展させるユーザー視点のデータサイエンス
―――Abema Data Center シニアデータサイエンティスト 松崎遥 様
何気ない会話と表情から、その人自身も気づいていない本音や期待を削りだす
―――RGFエグゼクティブサーチジャパン マネージングコンサルタント 倉地恵子
―本日はよろしくお願いします。最初に松崎様のこれまでのキャリアについて教えてください。
松崎様:学生時代は複雑系数理物理の領域で、人工生命、今で言うニューラルネットワークに関する学びを深めていました。AIやデータサイエンスなどの分野は存在するものの、明確に言語化されてはいませんでしたね。
倉地:現在の主流となっているデータ活用やAI技術の萌芽ともいえる最先端の学びの場にいらっしゃったのですね。
松崎様:次第に人工生命より社会システムに関心が移っていきました。大学卒業後はそれらの学びを活かすためにERPパッケージを開発する会社に入社しました。そこで数年キャリアを積み、次に選んだのが様々な情報プラットフォームを展開する企業でした。
―堅実にキャリアアップを重ねていかれたのですね。
松崎様:キャリアアップというよりも、今よりも楽しいところ、やりがいがあるところを求めた感じです。
倉地:そのあたりからデータサイエンティストの道に近づいていかれたのですね?
松崎様:そうですね。そこでは膨大なWebサービスを扱っていました。200サービスくらいでしょうか。私が主に担当していたのは、ユーザーの興味関心・嗜好性をデータ上で把握し、別のサービスをレコメンドしたり、サービスそのものを検討・改善するためのデータ活用に関するものでした。
―データサイエンティストとしてのやりがいは感じていらっしゃいましたか?
松崎様:確かに手ごたえを感じていました。在籍当時は、データ活用が発展の路を辿る渦中でした。数千万人を超えるユーザー情報に触れる機会はそうありませんし、それらを活用することで事業の成果もしっかり出る。データ活用の面白さを日々体感できていました。
倉地:人材採用の市場でもデータサイエンティストの実力に脚光が集まり、多くの企業さんがデータサイエンティストの採用に力を入れていた時期でした。
松崎様:データを使うことで売り上げが伸びる、会社からも評価される。でも、データサイエンティストとしては、少し迷う時期に直面しました。
―データを駆使するプロとしての歩み、とても順風満帆に見えますが。
松崎様:今まで機械学習が使われていなかったサービスに機械学習を適用すると、効果が見られる。さぁ、軌道にのった。でもその先はどう発展させていく?という感じで、ビジネスの横展開はスムーズなのですが、奥行きや発展形を導くのに悩ましいというか。そこで一度自分のやりたいことを見つめ直して転職を決意、ずっと関心のあった画像データ解析の専門企業に入りました。画像データ解析の分野は本当に幅広い領域に展開することができ、様々な業界・企業に対して技術提供を行っていました。
―新たな世界に広がりを求められたということですね。
松崎様:はい。ですが、ちょっと迷いがあったのは事実です。
倉地:データサイエンスのキャリアはありつつも、あえて自己成長の手段として画像認識の世界にチャレンジ、華麗に軸足を転換されたのかと思っていましたが、何か思惑と違っていたのでしょうか?
松崎様:Webサービスも画像データ解析も、ビジネスとしての成長、あるいは利益貢献という形でしっかり結果を残してきました。ですがデータサイエンティストの立場を離れて冷静に見てみると、そうしたAI技術は企業ではなく消費者にとって本当に必要なものなのかと疑問に思ったのです。技術発展があまりに速いのは事実ですが、それを追いかけるかのようにやみくもにデータ活用へ投資することが果たして正しいことなのか?と。
倉地:データ活用の奥深い部分を覗いたことで、データ活用の真の意味を知る。といったような?
松崎様:ある意味そうともいえます。本当のデータ活用の在り方を導こうと、その会社を退職して、次はドラッグストアチェーンの店舗運営の仕事に活躍の場を見出しました。
―そういった経緯があり、データサイエンスに回帰されたわけですね。
松崎様:はい。データ活用による変化や価値を企業論理からではなく、消費者の手が届くところで見てみたいという思いからでした。実際に店頭に立って接客をしながら、店舗運営を効率的に行うためのAI実装の企画・開発・運営などをしていきました。かつては企業の利益向上のためのAIが、ドラッグストアでは実際にお客さまが手に取る商品の導線となり、顧客獲得の手段として機能していきました。その成果や喜びは共に働く従業員とも分かち合いましたし、何よりも実際に来店されるお客さまのアクションや声としてダイレクトに反応が返ってくるのは、とてもうれしかったです。
倉地:データサイエンティスト自身が一般のお客さまの声を聞く機会はないですからね。非常に貴重な体験をされましたね。
松崎様:そうなんです。データを扱う仕事をここでもっと極めてやろう。そんな意気込みだったのですが、コロナ禍を含めた近年の世の流れもあり、AI活用への投資が一時中断という事態に。非常に残念ではあったのですがその会社を離れることを選択しました。
倉地:再び、自らの未来の岐路に立ったのですね。
―この次のステップがAbemaTVへの転職となりますが、そこに至った経緯はどのようなものだったのでしょうか?
倉地:松崎さんとの出会いは、世界最大級のビジネス特化型SNSのLinkedInでした。お声かけをしたところ、ちょうど転職を視野に入れはじめたタイミングということを教えていただきました。
―IT特化型人材紹介のプロの目から見て、松崎さんはどう映りましたか?
倉地:なんだろう・・・天才?とらえどころがない?のような(笑)。先ほどお話いただいたキャリアからもわかるように、お金や名誉のために仕事をする方ではない。いったいどんな思考パターンなんだろうと興味を持ちました。スキルやキャリアはもちろんですが、その根底にある価値観や物事を考え、行動する際の優先順位のつけかた、そもそも何にこだわりを持っていらっしゃるのかを何より理解したいと思いました。
―AbemaTVを松崎さんにご紹介したのは、どのような理由からですか?
倉地:データサイエンティストの確保を検討されていたAbemaTV様が求める人材像は、データにおける数字遊びでなく、本当にユーザーが必要とするものは何かを追求する姿勢を持つ方でした。データサイエンスが経営と直結する会社がまだ少ない中、データや数字の活用はあくまで手段であって、目的はそれらの先にあるユーザー視点やそこにリーチできるコンテンツやプロダクトの輪郭をデータサイエンス視点で描き出すことが大事。そうした背景の中、松崎さんの志向性とAbemaTV様の期待が一致するのではないかと思ったのです。
―データサイエンス目線とユーザー目線の両方をお持ちであったということですか?
倉地:まさにそうです。データサイエンティストの方のご紹介は何度も経験していますが、データと数字以外に興味はないとおっしゃる方も少なからずいます。ですが、松崎さんはデータと数字を渡したところで決して満足しない。これは何のために使われているのか?このデータを使う以外に手立てはないのか?と、データと数字の先までを見通す想像力を持つ方だからこそAbemaTV様をご紹介したのです。
松崎様:サイバーエージェントは広告・ゲーム、メディア事業など、市場が求めるものにしっかりと狙いを定め技術革新や事業投資を行ってきました。その発展はデータサイエンスを真摯にやった結果であり、今後さらにデータサイエンティストの活躍の場が広がるのではないかと期待しました。また、「新しい未来のテレビABEMAを、いつでもどこでも繋がる社会インフラに」というメディアとしての姿勢もデータサイエンティストとして強く関心を寄せる要素でした。さらに「ABEMA」という新しいメディアの形を生み出しつつも決してテレビや映像の世界に対する敬意を忘れないという藤田社長(株式会社サイバーエージェント 代表取締役、株式会社AbemaTV 代表取締役社長)の言葉は心に残っています。データサイエンティストとしてAIやデータを駆使するだけでは価値を生むことは難しく、やはり素晴らしいコンテンツを生み出しているテレビや映像の世界に対する敬意を忘れることなく、行動をしていかなければなりません。「ABEMA」はテレビ朝日さんとの共同事業でスタートしていますし、さまざまな企業との連携にも積極的です。そしてそのすべてのアクションの根底にあるのは、メディアの価値や意味を重んじ、手をかけながら良質なコンテンツを世の中に送り出すというスタンスです。長くデータを扱う仕事をしてきた私にとっては、高い給料や名声を得るよりも事業の一部として成果を出すことにこだわりながら、多くの視聴者の満足のためにデータサイエンスを活用したい。そしてそうした強い思いでひとつになれる仲間がいる場所で頑張りたいと思ったのがAbemaTVに駒を進めた理由でした。
―採用支援の中で、候補者のお話を聞いて、この会社がはまると感じる勘所はあるのですか?
倉地:はい。人材業界で働き、早21年ですので、長年の勘所はあります。私の場合、その候補者のお話を聞いていると、候補者が求めるものに当てはまる会社名が頭に浮かんでくるんですよ。これは持論になりますが、私にとっての最適な採用支援とは「物理法則」のようなものではないかと常々考えています。まず、候補者の日常的な言動や振る舞いという目に見える現象を通して、実はご本人自身も気づいていない行動規範や価値観といった、ある種の法則や定義を見つけ出すと同時にその候補者がどんな時にどんな行動をとるであろうか?という部分の分析を深めます。そして候補者が最も自然な形でご自身の法則や定義を実践できる企業に導くことが私の役割だと考えています。松崎様の場合は、ユーザーが根源的に欲する事業で、データサイエンスの力を活かしたいという欲求と、事業においてしっかりと成果を出しながら働きたいという価値観をお持ちだという結論に行きつき、松崎様の良さをますます発揮できる場所としてAbemaTV様が最適であるという仮説を立てたのです。
―スキルやキャリアだけでは判断できないことにも目を向けるのですね。
倉地:候補者と向き合った際、スキルやキャリアなどの可視化された事実も確かに判断基準ではあります。しかし、転職を視野にしているということは、スキルやキャリアだけでは読み取ることができない潜在的な欲求や本音が、これまでの自信や自負、希望や不安、今後の期待といったいろいろな感情を隠れ蓑としながら、心のどこかに潜んでいます。私は、そうした本質の部分をたっぷりの時間と会話を通じて表層化させたいと思っています。余計なものを削り落としながら、その方の本心や希望をちょっとずつ形にしていくコミュニケーションといえばいいでしょうか。
―データサイエンスの力で、「ユーザーが根源的に欲する事業で、仲間と成果を出したい」という欲求は叶いましたか?
松崎様:いくつものプロジェクトに参加する中で、特に力を注いでいるのがデータサイエンスの力によってインハウスマーケティングを推進する取り組みです。7年分の視聴データを活用し、ユーザーの興味予測やユーザー心理・行動分析などを、繰り返しさまざまな視点から広告戦略を見直しているのですが、私たちが据えている目標は億単位で視聴者にアプローチできる戦略作りです。コンテンツ提供と同様に広告収益も事業の要となる部分ゆえ期待も大きいですね。こうした取り組みにおいては、社内メンバーとの連携も少なくありません。ありがたいことに、社内にはグループ会社で活躍した優秀な人たちが多数集まってきていますから、知恵やスキルを借りたい時には、社内を行脚しながら仲間探しをしているんですよ。
―比較的、自由な環境なのですね。
松崎様:そうですね。意見はどんどん言える環境です。むしろ意見を言うことが役割というか(笑)。例えばアイデアが浮かんだら「これ、どうでしょう?」と色々な人に話して回ります。そこにあまり組織の垣根はなくて、AI研究のチームに話をしたかと思えば、そこで広がったアイデアを事業部に持っていくことも日常的なやりとりです。行く先々で議論することも珍しくなく、そういう環境だからこそ、世の中をアッと言わせるコンテンツが生まれるのだと思います。ユーザーが何を求めているのか?何ができるのか?というひとつのテーマを、自分と違った価値観を持つ人たちと突き詰めることは単純に楽しいですし、勉強にもなります。
―RGF エグゼクティブ サーチ ジャパンを転職のパートナーに選んでよかった点はありますか?
松崎様:RGFエグゼクティブサーチジャパンもですが、倉地さんに出会えたことがよかったですね。倉地さんは、人を見るいろいろな目線を持っていらっしゃいました。ある時、マーケティング調査の話で2時間くらい雑談をしました。転職相談とは全く関係のない話でもじっと聞いてくださる姿勢に好感を持ちました。単に聞き流しているのかな?と思いきや、突如鋭い質問をされたりして、私の潜在的な仕事への希望を探り当てられた気がします(笑)。
―松崎さんからのポジティブなコメントをいただき、倉地さんはどうですか?
倉地:ありがとうございます。私が転職先をご案内するスタンスに「世間で良いと言われているキャリア観が決して正しいとは言えない」というものがあります。例えば、営業の方が別の営業職で職位を上げることが正しいキャリアの磨き方だと考えるのは自然です。しかし、実際は営業を本当にやり続けたいのかがわからないまま転職活動をする方も多い。そんな方のこんなことをやりたいという本音を救い上げて、社会に唯一無二の価値を提供できる人材へと化すお手伝いをさせていただきたいと私は常々思っています。他人のキャリアパスをお手本に自分もこうあらねばと信じる時代ではありません。自分らしさをキャリアの中に組み入れていき、オリジナルのキャリアパスを作ることが私の役割だと確信しています。松崎さんの場合は、「人の役に立つ仕事をしたい」という部分でオリジナリティにあるものでしたし、それと同時に強いキャリアを歩まれてきた人でした。他人の価値観や評価に惑わされることなく、自分の価値を貫く方との出会いは本当に久しぶりでした。
松崎様:自分だけでは、オリジナリティを大切にしたいと思いつつも、次に打つべき手が明確には分かっていなかった気がします。
倉地:だからこそ、その強いオリジナリティを活かすマッチングを考えることが私の仕事だと思いましたし、松崎さんの「やりたい」が明確だったから、それに見合う企業も明確に浮かんできたんです。松崎さんは2時間の雑談とおっしゃいましたが、決してそんなことはありません。私にとっては松崎様の本心を削り出すために必要な貴重な2時間だったのですよ。
データサイエンティストの松崎様。その活躍を日々見守る取締役の長瀬様とAbemaTVにおけるデータ活用や求める人物像についての対談記事はこちらから。
Profile
株式会社AbemaTV シニアデータサイエンティスト
大学院を卒業後、ERPパッケージの開発会社に入社、CEO直属の新製品(AI関連)開発などに従事する。その後、情報プラットフォーム関連の領域で約8000万人×10年のビッグデータ分析を担当、KPIを平均2倍にする成果をあげたことも。数年を経て松尾研発AIベンチャー株式会社PKSHA Technologyへ入社、画像部門のエンジニアリングマネージャーとして、技術選定・製品開発・対顧客説明等を担当後、小売業界の実務を経験しながらデータサイエンティストとしても活躍。2023年1月、株式会社AbemaTVに入社。
RGFエグゼクティブ サーチ ジャパン マネージング コンサルタント
愛知県名古屋市出身、大学では心理学を専攻。国内大手証券会社でリテール・ホール両方のエクイティセールスに従事後、学生時代の米国留学経験を活かし国境に制限されないキャリア構築を目指し渡豪。帰国後、大手英会話学校で7年マネジメントを経験した後、外資系コンサルティングファームに活躍の場を見出す。その後『人材のポテンシャルが企業のポテンシャル』に直につながる理想形を実現するため日系大手ヘッドハンティング会社に転身、6年で同社の取締役となるものの、益々のグローバル化が進む国内経済、それに伴う人材要件の国際化を肌で感じ、日系企業のグローバル化の一助となるべくRGFエグゼクティブ サーチ ジャパンへ入社。
現在は、テクノロジーチームの主要メンバーとして、AIと新技術に注力、将来のビジネス戦略のためにデータサイエンス、ディープラーニング、機械学習、コンピュータビジョン、NLP、最適化技術等を必要とする自動車、ロボット、WEBメディア、エンターテインメント業界などを担当。その知見を活かしながら、今回、松崎様とAbemaTV様の橋渡しを行った。
【倉地からのメッセージ】
ぜひ、思い描くキャリア構築に関するあなたの想いを聞かせてください!どうしたら今より納得できる仕事が見つかるのか、望むキャリアを歩めるようになるのかを一緒に考えましょう!ご自身では知らないご自分や、気づいていない可能性を見つけるお手伝いができるかもしれません。「Comfort Zone」から出た外側に、案外、目標達成への意外な近道があることもあります。一人で悩まず、私とのキャリア面談が本当に望む働き方を知る一助になれば望外の喜びです。