日本語特化のコンパクトかつ高性能な大規模言語モデルcotomiや、世界トップレベルの生体認証技術等、多様でイノベーティブな先進的AIを展開するNEC。RGFエグゼクティブサーチジャパン(以下「RGF」)の転職支援を活用頂いているNEC様に対談頂きました。NECの研究員の中でもたった数人しかない上席研究員に就任された北野様に、NECがAI研究用スーパーコンピュータ(以下AIスパコン)で目指したいことや、AIスパコンとしてのプラットフォームの魅力、共に活躍したいエンジニアの人物像について、弊社コンサルタントの萩口と対談の機会を頂きました。
「求めているのは、プロダクトに誇りを持って魂を込められる真の技術者」
―――NEC グローバルイノベーション戦略統括部 深層学習基盤開発グループ
上席研究員 / ディレクター 北野 貴稔 様
「専門性の高いIT人材採用でも徹底サポート、採用責任者の理想を実現」
―――RGFエグゼクティブサーチジャパン プリンシパルコンサルタント 萩口 博士
―本日はよろしくお願いします。まずは経歴を簡単に説明していただけますか。
NEC北野様:
はい、私はですね、長年NECの研究所にて、様々な分散システムの研究開発に携わってきておりまして、代表的なものとしては、インド国民13億人が利用する大規模な国民IDシステム(アドハー)の生体認証プラットフォームをアーキテクトとして開発しています。本システムは、世界最大の人口を有するインドの国民一人ひとりに固有のIDを発行する、顔認証・虹彩認証・指紋認証を用いた超大規模なAIの分散システムです。
その後は、機械学習の研究テーマリーダーとして、AIの技術開発の強化やAIの研究開発環境の標準化による効率化などを進めまして、現在はNECの国内最大級のAIスパコンの企画・設計・開発・運用の全体を統括しています。このように、入社以来、AIの研究開発から事業化まで、一貫してNECの先進AIの競争優位の実現に向けた取り組みを行ってきています。
―なるほど、大規模なAIのシステム開発の経験がAIスパコンの開発に繋がっているのですね。では、「NECのAIスパコン」の独自性と魅力を教えてください。
NEC北野様:
NECのAIスパコンは、先進サーバーのコンピュータアーキテクチャと先端のネットワークアーキテクチャから構成される「計算機基盤」と、Kubernetesを中心とした先端の「ソフトウェア基盤」とを高次元で融合した世界でも有数のAIスパコンです。
ソフトウェア基盤の中核にKubernetesを据えて、開発基盤から運用基盤まで全ての技術をGo言語(※1)で拡張することにより、既に非常に開発効率の高いプラットフォームとなっています。これをさらに発展させ、先進的計算機基盤を柔軟かつ拡張性の高いSoftware Defined AI Supercomputerとして扱えるようにすることで、技術進化の早いAIの世界において、どのような先進AIでも開発可能なAI開発のための世界トップレベルのプラットフォームへと進化させたいと考えています。
これにより、NECの世界有数のAI研究者の能力を、国内最大級の計算能力によってスケールさせることにより、社会の革新を支え続けることができるというのが、このAIスパコンに携わることの最大の魅力です。
(※1) Googleがソフトウェアの生産性を向上させるために開発した開発言語
―非常にレベルが高く、前例のない中で、何故NECでは国内最大級のAIスパコンを開発したのでしょうか?
NEC北野様:
理由は二つあります。
第一の理由は、社会からの要請に応えること。すなわち、さまざまな分野に生じている高度な社会課題を迅速に解決するためです。AIへのニーズは拡大の一途を辿っており、ありとあらゆる事業領域に適用範囲が拡大しています。また、いま世界はVUCA時代を迎えており、社会の変化も急激に進んでいる状態です。従って、変化し続ける社会を捉え続け、高度な社会課題を迅速に解決するためには、多様で多数のAIを生み出すだけの計算能力が必要となります。NECが社会価値創造型企業として社会全体に貢献していくためには、国内企業で最大規模のAIスパコンの開発は必然であったということです。
第二の理由は、NECが先進AIをつくり出せる企業であり続けるためです。AIは1年で劇的に技術が進化していきます。ですから、AIスパコンを開発するための高度な開発・運用能力を保有し、AIの進化に合わせてAIスパコンそのものを進化させることが必要不可欠なのです。社会に革新的な価値を提供し続けるために、NECが先進AIを創り続けるための高度な学習インフラを進化し続けられることが極めて重要であると考えています。
NECは半世紀も前からAIの技術開発を行っており、機械学習関連の論文では難関学会の採択数で世界10位(※2)を誇ります。また、生体認証を始めとして世界トップレベルの先進AI技術を数多く保有しています。世界有数のAIの技術開発能力をAIスパコンによってさらに強化することで、革新的な社会価値の創造を行い、NECを世界トップレベルのAIテックカンパニーへと導きたいと考えています。私が設計したインド国民IDシステムの生体認証プラットフォームも10年をかけてインド国民13億人が利用するまでになっていますし、生体認証のAIだけでなく、生成AI技術においても必ず世界で勝てる領域を作り出せると思っています。
(※2)NeurIPS、 ICML、ECML-PKDD、KDD、ICDM等の難関国際学会で算出。2020-2022、NEC調べ。
―このAIスパコンは、実際にどのような用途で使われているのですか?
NEC北野様:
NECでは、大規模言語モデルに代表される生成AIだけでなく、生体認証・画像認識・映像解析・音声認識・データ分析・ロボット制御技術等の多種多様な先進AIの学習を行っていまして、AIスパコンはNECで行っている全てのAI研究で使われています。NECの大規模言語モデルcotomiも、このAIスパコン上で開発されています。このように、AIスパコンは様々な先進AIの開発に使われ、そこで生み出された先進AI群は、世界中で使われています。
―AIスパコンは様々なAI研究で使われているんですね。そんな「NECのAIスパコン」のエンジニアとして携わることの魅力とは何でしょうか?
NEC北野様:
技術的な観点、社会的な観点で魅力があります。
技術的な観点では、全てのレイヤを自前で開発しており、プラットフォームを絶えず進化させ続けられるところです。昨今の日本では、クラウドなどで技術を利用することだけになってきており、本当の意味での技術者がいなくなってきていると感じています。自分たちで全てのレイヤを作りこめなければ、進化の早いAIの世界においてイノベーションは起こせません。特に、AIスパコンはコンピューティングの最先端であり、ハードウェアからソフトウェアまで詳細を熟知していなければ本当に優れたプラットフォームは作れません。商用製品を買ってきて使う・クラウドを利用するだけでは、この早いAIの変化に合わせてAIスパコンを進化させ続けることはできないのです。すなわち、AIの進化にあわせて、AIスパコンのすべてを進化させ続けることができる、これが技術的な魅力です。
社会的な観点では、先進AIで新たな社会価値の創造を行えるところです。NECは、半世紀も前からAIの技術開発を行っており、世界中でNECのAIが利用されており、社内外で高い評価を得ています。NECのAIスパコンは、NECの全AI研究で活用されており、NECの大規模言語モデルcotomi開発の成功やAI王2連覇(※3)など、次々と先進的な成果が出始めています。また、ChatGPT登場の3年前からAIスパコンを企画し、その開発を行ったその先見性とNEC独自の生成AIの短期開発により生成AI市場に早期参入したことを受け、NECが掲げている行動指標を高いレベルで実践したプロジェクトだけが表彰されるNEC Award 2023を受賞(※4)するなど、社内でも非常に高い評価を得ています。NECには、この国内最大級のAIスパコンに加えて、世界トップレベルのAI研究者が多数在籍しており、多様なお客様へ事業を展開しております。NECだからこそAIで社会に革新を起こせる、これがNECでAIスパコンに携われる社会的な魅力です。
(※3)「AI王 〜クイズAI日本一決定戦〜」 2連覇達成: NECで活躍する研究者 | NEC
(※4)NEC Group ブランドマガジン 宣伝広告 | NEC p11参照。
NEC Award 2023のAIスパコンの展示
―自前でそれぞれのレイヤを開発できる経験は本当に貴重だと思います。それではプラットフォームエンジニアとしての技術的な面白さはどこにあるでしょうか?
NEC北野様:
ハードウェア面・ソフトウェア面、すべての面で技術的な面白さがあります。
ハードウェア面では、AIスパコンは間違いなく世界で最先端のコンピューティング基盤です。GPUサーバー、高速ネットワーク、大規模分散ファイルシステム等の先端ハードウェア群を国内最大級のAIスパコンで大規模に扱えるのは、大企業ならではの技術的な面白さがあると言えます。非常に高消費電力のサーバー群を問題なく安定的かつ高速に動作させるように設計するのか、これはデータセンターファシリティーからネットワーク・サーバー群の設計まで多様な面で面白さがあります。
ソフトウェア面では、このような先端のハードウェア群を、ソフトウェアで安定的に制御するだけでなく、AIの進化に合わせて柔軟に発展させ続けられるようにするのも、非常にチャレンジングであり面白いところです。ハードウェアを深く理解することで、多数のサーバー群を高度な分散システムとしてまとめあげるだけのソフトウェア開発の力が、全てのレイヤで必要になります。
ですから、ハードウェア・ソフトウェアの両面から、全ての技術レイヤにおいて深堀をする必要があり、真摯にモノづくりに取り組める面白さがあります。
―プラットフォームエンジニアができることがたくさんありそうですね。
NEC北野様:
はい。自らの力で基盤技術を作り上げていくこと、それがAIの進化を支えることになり、先に述べたようにプラットフォームエンジニアが活躍できるところがたくさんあります。
日本では諸外国の技術を利用するだけになってきており、基盤技術の開発ができなくなってきています。これは、技術でイノベーションを起こす機会を奪われているということと同義です。AIによる革命は始まったばかりであり、その革新性を考えれば、AIを作るケイパビリティーを失ってしまえば、失われた30年どころか失われた100年となっても不思議ではありません。
そのような状況を変えるために、このAIスパコンを企画・開発しており、AIの技術開発を高度に行えるケイパビリティーを有することが、日本にAIを活用した次世代の産業を作っていくうえで重要であると考えています。その実現のためには、共に戦ってくれる優秀なプラットフォームエンジニアが非常に重要になるわけです。AIスパコンでは、ソフトウェアの技術スタックとしてはWeb系システムとも共通する部分も多く、AIスパコンの開発者だけではなく、Kubernetes関連の開発者を中心にWeb系企業のプラットフォームエンジニアの方にも来ていただいています。世界でも有数のプラットフォームを開発し、AIで世界に革新を起こしたいと思っている方は、是非ご応募いただければと思っています。
―今後益々NECのAIスパコンは進化していきますね。このチームでこんな方と一緒に働きたいという人物象について教えてください。
NEC北野様:
テクノロジーに対する深い愛があり、社会に新たなイノベーションを起こしたいという強い思いのある人と、一緒に働きたいですね。これからのAIの時代では、計算機能力の進化に伴い、AIの劇的な進化が続いていきます。それにより、AIが社会の革新の中心的技術となり、劇的な経済成長を支え、世界の未来を創っていくことになります。非常に技術が高度化していく社会において、未来の社会価値の創造には、広範囲な高いレベルの技術力はもちろんのこと、技術を社会のために真に役立てるという高い視座と強い思いが必要になってきます。ですから、プロフェッショナリズムのある強い思いのある人と、共に未来を創造していきたいと思っています。
―技術的な部分はもちろんの事、そのような同じ志をもつことも非常に鍵となりますね。何故、RGFを採用パートナーとして選んでいただけたのでしょうか?
NEC北野様:
ITエンジニアに対する専門性の深い理解と、仕事に対するプロフェッショナリズムがある萩口さんがいたからです。私は、どのような仕事をするときにおいても、本当のプロフェッショナルと仕事をするということにこだわっています。それが仕事の質を決定づけるからです。萩口さんは、非常に難しいAIスパコンの概念を早く理解し、必要となるエンジニア像をすぐにご理解いただけました。AIスパコンそのものは非常に技術的にも理解が難しいものではありますが、技術の詳細がわからなくても、IT業界のエンジニア採用に長年特化してきたことでプロの勘が働くということなのだと思います。これが通常のエージェントですと、このような専門職採用の場合に、その勘が働かず非常に難しいわけです。萩口さんとであれば、NECに世界一の高度なAIのプラットフォームエンジニアリング集団を作るという私の願いを実現できると思えたからこそ、RGFを採用パートナーとして選んだということになります。
※【NEC社 x RGF ES対談 vol.2】NECでSREとして働く面白さを徹底解剖!~Web系企業からNECへ~は、こちら。
Profile
NEC グローバルイノベーション戦略統括部 深層学習基盤開発グループ
インド国民13億人が利用する世界最大の大規模生体認証システム(アドハー)を実現、政府・空港等を中心に大規模AIの実行プラットフォームを世界40か国へと展開。現在は、機械学習の研究テーマリーダーを経て、国内最大級の「NECのAI研究用スーパーコンピュータ※」の企画・設計・開発・運用を主導。NECの先進AIの技術開発から事業化までを統合的に支え、一貫してNECの先進AIの競争力強化に携わる。
※ 社会価値の創造を加速するNECのAIスーパーコンピュータRGFエグゼクティブサーチジャパン
プリンシパルコンサルタント 萩口 博士
20年以上に渡り日本のリクルーティング業界で勤務しており、テクノロジー分野のスペシャリストとして、アプリ開発、インフラストラクチャー、DX、エンジニアリング、プロジェクト/プロダクトマネジメント等の様々な分野の高度エンジニア人材の採用を担当。
専門分野としては、テックリード/リードエンジニア、インフラストラクチャリーダー/マネージャー、プロジェクト/プロダクトマネージャー、ITコンサルティング/システムインテグレーション等のエンジニア採用であり、中間管理職からエグゼクティブ層・トップマネジメントの採用実績多数。
クライアントと候補者の両方の満足度を重視しており、ゼロからのチーム作りや難しい市場での採用など様々な状況の採用経験を活かし、多様なクライアント様の採用の支援並びに候補者様のキャリアアップをサポート。