日本史上初「FIFA ワールドカップ カタール 2022」全64試合無料生中継の実現など、多様でイノベーティブな取り組みや事業を展開するAbemaTV社。RGFエグゼクティブサーチジャパン(以下「RGF」)の転職支援を通じて、AbemaTV社でデータサイエンティストとしてご活躍されている松崎様に、同社の取締役(株式会社サイバーエージェント 専務執行役員)の長瀬様をご紹介いただき、ABEMAが新しい未来のテレビとして今後目指したいことやデータ活用の重要性、共に活躍したい人物像について対談いただきました。
求めているのは事業領域にまで踏み込めるデータサイエンティスト
―――――株式会社AbemaTV 取締役 長瀬慶重様
挑むミッションはデータを活用した「新しい未来のテレビ」の利益創出
―――――株式会社AbemaTV シニアデータサイエンティスト 松崎遥様
―本日はよろしくお願いします。まずは「ABEMA」のサービスとしての独自性と魅力を教えてください。
長瀬様:キーワードとしては、「無料」「生中継」「同時性」「報道」「利便性」が挙げられます。
サブスクリプションサービスが溢れる市場で、「ABEMA」は登録不要且つ”無料”で多彩なジャンルの約25チャンネルを24時間365日放送しています。国内唯一の24 時間編成のニュース専門チャンネルも提供しており、”報道”を重視していることもユニークな点です。またさまざまなスポーツの試合・アーティストライブの”生中継”もおこなっています。ここでは”同時性”を大事にしており、視聴者同士がリアルタイムでコミュニケーションできるコメント機能の提供やオンラインでのグッズ販売など、コンテンツを多角的に楽しんでもらうための工夫がされています。
最後の”利便性”については「ABEMA」では開局以降、ライフスタイルに合わせいつでもどこでも様々なシチュエーションで番組をお楽しみいただくために、スマートフォン、テレビデバイス、タブレット、セットトップボックス、スマートスピーカー、ゲーム機などマルチデバイスへの対応を強化してきました。時間や場所にとらわれることなく、作品を楽しんでもらうことができるのも強みの1つです。またサービスの安定化への取り組みも継続的に続けており、スポーツの大規模配信においても、大きなトラブルなく配信できる体制が整っています。
―そんな「ABEMA」の運営や事業に技術者として携わることの魅力は何でしょうか?
長瀬様:まずは多彩なコンテンツジャンルを扱っているということが一点。そしてその多くが、大規模データを保有していることでしょうか。先ほど申し上げた安定性に通じますが、制作チームが手掛けた魅力的なコンテンツもユーザーに正しく届かなければ意味がない。加えて、24時間いつでも見ることができることにもサービスの価値があるからこそ、技術者も高いレベルが求められますし、そういったサービスの根幹を守ることに対する誇りややりがいも生まれると思います。
―それではデータサイエンティストとしての面白さはどこにあるでしょうか?これは松崎さんにお話しいただきましょうか?もしよければ現在のお仕事などもあわせてご紹介ください。
松崎様:様々なプロジェクトに参加していますが、その一つがインハウス・マーケティング視点でのメディア価値の確立です。例えば、スポーツ系番組の視聴者のスポーツ以外に対する興味関心を予測、広告配信に活用するといったものです。ここで肝となるのがデータ活用です。大げさに言うとデータは視聴者の本質を暴く道具なのです(笑)。
―エッジの効いた表現ですね(笑)。 具体的にはデータ活用で視聴者のどういった部分が見えるのでしょうか?
松崎様:例えば「ABEMA」の将棋チャンネルでは、棋士の藤井聡太さんの対局を多数生中継していますが、視聴者全員が将棋ファンかというとそうでもなかったりします。なぜなら、藤井聡太さんはコア層からライト層まで幅広く支持されているからです。番組では対局の行方だけでなく、例えば対局の合間に召し上がっている昼食やスイーツといったものにも視聴者は関心を寄せていることが表れています。ライト層の興味関心はそれ以外にも、将棋以外の番組の視聴履歴に特に現れます。ABEMAでは多彩なジャンルを配信しており、さらにそれら番組内容に関するかなり詳細なデータが残っていますから、たとえ将棋対局のライト層オーディエンスであっても、将棋以外に対する興味関心が高解像度に予測可能なのです。
―なるほど、データサイエンスができることはまだまだありそうですね。
松崎様:番組のコストおよび収益についてもある程度データで見通せます。例えばABEMAでは、公開後5年間配信しているような番組も珍しくありません。すると、5年間の収益があるので、単年では損益分岐点を決定できません。1年目の収益から5年間の収益をどのようなモデルで予測し、どのように番組調達に関する意思決定をするのか?5年ではなく1回の冠番組とした場合、そこで獲得した視聴者が、その後どう行動するのか?顧客一人あたり、生涯でいくら利益が積み上げられるかを計算することも可能です。マーケティング効率やTwitterでの盛り上がりの分析など、データサイエンティストの出番は本当に多いですよ。
―先ほど、多彩なコンテンツジャンルを扱えることが「ABEMA」の強みという話題が出ました。それについてはいかがでしょうか?
松崎様:ディープラーニングを主たる武器とするデータサイエンティストにとって、動画配信サービスは憧れのひとつです。YouTubeやNetflixには負けられないし、技術者としては日本発のサービスに対してロマンを感じています(笑)。先の「FIFA ワールドカップ カタール 2022」の全64試合無料生中継は近年の動画配信サービスでは群を抜いているトピックスだったと思います。スマホ、タブレット、PC、テレビなどマルチデバイスでどこでも無料で見ることができましたから。
―コンテンツの力とそれを送り出す技術の両立あってこそですね。
松崎様:まさに、コンテンツ力×技術力が両立していることに魅力を感じています。データサイエンティスト的には、制作・映像配信・広告・アイドルのライブ・格闘技の大会など、様々な領域に参加できますし、扱えるデータの規模も巨大で伸びしろが沢山あると考えています。
長瀬様:「FIFA ワールドカップ カタール 2022」の取り組みは「ABEMA」としても大きなチャレンジでした。6~7年ほどかけてプロダクト制作とマーケティングを実施。関わったスタッフは本当にコツコツと地味な作業の繰り返しでしたが、その努力は本番の時に実を結ぶことになります。新規のアクティブユーザーが、その時に一気に積み上がっただけでなく、一般ユーザーへの認知も増えると同時に、広告主や関連企業のみなさまからポジティブなフィードバックも多数あり、我々自身も「ABEMA」がメディアとしてさらに一段ステージを上げたことを実感できましたから。
―それではお二人に質問です。「ABEMA」においてデータサイエンティストの役割あるいは意義は何でしょうか?
長瀬様:難しい質問ですね。松崎さん、どうですか?
松崎様:事業成長とコスト削減。データ活用が2つあるとすれば、期待されているのは前者。経営陣の皆さんが掲げている会社の成長目標がとんでもなく高いので、機械的にデータサイエンスを適用してコスト削減しました程度ではダメですよね(笑)。
長瀬様:マイナスを減らすよりも、プラスを生むほうに重きを置いている社風なので、ある意味データサイエンティストが活躍できる余白はまだまだあると思います。新規・既存=3:7くらいの割合でしょうか。その理由はわりと明快で、例えばYouTubeなどの動画サービス、テレビゲームなど、デバイスを使って楽しむメディアが今の世の中は本当に多い。その中で、いかに視聴者の時間を「ABEMA」に向けてもらうかが勝負です。その勝ち筋として変化球も飛び道具もないと思っています。「FIFA ワールドカップ カタール 2022」のようなコンテンツから、こんな番組あるのかと言わしめるほどのニッチで豊富なジャンルの番組を、最高品質で届け続けることがまず重要。データやAIの活用を武器としながら、とにかく視聴者の方が便利に楽しく利用してもらえるものを愚直に作るということだけはブレずに取り組みたいと思っています。番組を作るスタッフ、配信環境を整えるメンバー、そして松崎さんのようにデータから事業の未来を読み解く方が足並み揃えることで、その目標は達成できると信じています。
―データサイエンティスト含め、スタッフの方の活躍にますます期待ですね。
長瀬様:そうですね。スタッフがのびのびと活躍できるようにするのが、私たち経営層の務めだと思っています。例えば、将来的な利益につながる技術投資の手をゆるめることはないですし、コンテンツに対する投資も続けたいと思っています。社内ではパンプアップと言って、売上を十分に回しながら、無理なく利益を上げていこうということを実施していて「ABEMA」に関連するものだったらあえて制約は設けずに、企画を進行できる体制になっています。
松崎様:技術的観点からはAIの発展速度が高まっているのは事実で、コストカットよりも、新しい事業の柱となる技術投入のほうが、実はビジネスとしての速度は速い。そういった意味でもスピード感を持って事業投資がなされているのはとても嬉しいことです。
―最後に、こんな方にAbemaTVで活躍してほしいという人物象について教えてください。
長瀬様:ビジネスやユーザーの課題解決のさらにその先、事業領域そのものに踏み込んでいくような人と仕事をしたいと思っています。データサイエンティストをはじめとしたAI系エンジニアについて社内で議論することもありますが、最終的に行き着くのは、技術でどんな問題を解決できるか?いかに好奇心を持ってチャレンジできるか?の2点になります。松崎さんはまさにその2つを兼ね備えている方。これまでの経験やスキルはもとより、夢をもってすごいことを成し遂げたいという気持ちが強く伝わってくるからです。
松崎様:長瀬さんに限らず、他の役員や制作部門のトップの方も真剣に話を聞いてくれて、喧々諤々の議論をすることもあります。皆さん熱いんです(笑)。
長瀬様:私たちが目指すのは「新しい未来のテレビとしての「ABEMA」を、いつでもどこでも繋がる社会インフラ」として成立させることで、これを実現するために最後の力となるのは志だと思います。ちょっと矛盾するかもしれませんが、目的達成のためにあえてデータを捨ててもよいと思えるくらい好奇心が強いデータサイエンティストにも期待しています。机上で数字とデータの世界に没頭するのもいいでしょう。でも、それでは一生分からないことがまだまだあります。「ABEMA」がより大きく進化するためには、まだ「ABEMA」を使ったことがない方たちの心理に飛び込まないといけません。要は分析に使えるデータやソースが存在せず、まだ見ていない人がなぜ見ていないのか?という疑問だけが目の前にある状況ですね。では、そういう場合はどうすべきか?答えは明快で、データという概念をいったん横に置き、人間としての好奇心や直感的な感覚、あるいは実際の生の声から、何が大事か?何を提供すべきかを?創造するしかないのです。データサイエンスは駆使しつつも、そういった柔軟な視点と思考でABEMAを盛り上げてくださる仲間に期待しています。
松崎様とそのご転職をサポ―トさせていただいた倉地の対談記事はこちらから。最初の出会いから採用に至るまでのエピソードをご紹介しています。
Profile

株式会社AbemaTV 取締役
通信業界での研究開発を経て、2005年サイバーエージェントへ中途入社。「アメーバブログ」やコミュニティサービス「アメーバピグ」、ソーシャルゲーム、コミュニティサービスなどのサービス開発を担当し、2014年に執行役員、2020年に常務執行役員に就任。「ABEMA」をはじめ当社のメディア事業に携わるエンジニアの採用や、技術力をさらに向上するための評価制度などの環境づくりにも注力している。現在はサイバーエージェント専務執行役員(技術担当)および株式会社AbemaTV取締役を務める。

株式会社AbemaTV シニアデータサイエンティスト
大学院を卒業後、ERPパッケージの開発会社に入社、CEO直属の新製品(AI関連)開発などに従事する。その後、情報プラットフォーム関連の領域で約8000万人×10年のビッグデータ分析を担当、KPIを平均2倍にする成果をあげたことも。数年を経て松尾研発AIベンチャー株式会社PKSHA Technologyへ入社、画像部門のエンジニアリングマネージャーとして、技術選定・製品開発・対顧客説明等を担当後、小売業界の実務を経験しながらデータサイエンティストとしても活躍。2023年1月、株式会社AbemaTVに入社。

RGFエグゼクティブ サーチ ジャパン マネージング コンサルタント
愛知県名古屋市出身、大学では心理学を専攻。国内大手証券会社でリテール・ホール両方のエクイティセールスに従事後、学生時代の米国留学経験を活かし国境に制限されないキャリア構築を目指し渡豪。帰国後、大手英会話学校で7年マネジメントを経験した後、外資系コンサルティングファームに活躍の場を見出す。その後『人材のポテンシャルが企業のポテンシャル』に直につながる理想形を実現するため日系大手ヘッドハンティング会社に転身、6年で同社の取締役となるものの、益々のグローバル化が進む国内経済、それに伴う人材要件の国際化を肌で感じ、日系企業のグローバル化の一助となるべくRGFエグゼクティブ サーチ ジャパンへ入社。
現在は、テクノロジーチームの主要メンバーとして、AIと新技術に注力、将来のビジネス戦略のためにデータサイエンス、ディープラーニング、機械学習、コンピュータビジョン、NLP、最適化技術等を必要とする自動車、ロボット、WEBメディア、エンターテインメント業界などを担当。その知見を活かしながら、今回、松崎様とAbemaTV様の橋渡しを行った。
【倉地からのメッセージ】
ぜひ、思い描くキャリア構築に関するあなたの想いを聞かせてください!どうしたら今より納得できる仕事が見つかるのか、望むキャリアを歩めるようになるのかを一緒に考えましょう!ご自身では知らないご自分や、気づいていない可能性を見つけるお手伝いができるかもしれません。「Comfort Zone」から出た外側に、案外、目標達成への意外な近道があることもあります。一人で悩まず、私とのキャリア面談が本当に望む働き方を知る一助になれば望外の喜びです。