2018 年から7年連続で、日本における「働きがいのある会社」ベストカンパニーに選出されている日本ストライカー株式会社は、AEDや救急搬送用電動ストレッチャーといった救急の領域から、手術室内で使われる各種ドリル製品や手術支援ロボット、内視鏡、画像診断装置、整形外科インプラントや脳血管内治療製品、そして手術後のケアを担うICU周りの製品まで幅広く提供し、患者さんのQOL向上に貢献している。人事畑ご出身の同社代表取締役社長である水澤氏の歩んだキャリアや、リーダーとして大切にしている”資質と行動”、グローバル人材育成への情熱、求める人材像のお話にとどまらず、日本初の整形外科向けロボティックアーム手術支援システムについてなど、水澤氏に幅広くお話をお伺いしました。
「日本の医療機器業界を牽引する卓越したリーディングカンパニーを目指し、日本の医療の向上に貢献します」
―――日本ストライカー株式会社 代表取締役社長 水澤 聡 様
「信頼関係を重視し、企業の文化と候補者の価値観を深く理解。双方の期待を超える提案、未来を見据えた長期的な成功を誠実にサポート」
―――RGFエグゼクティブサーチジャパン プリンシパルコンサルタント 小林 法人
1. 水澤様のご経歴に関するトピック・バックグラウンド
―RGF小林:本日はお忙しい中お時間頂きありがとうございます。最初に、水澤さんは”人事畑ご出身のビジネスリーダー”というのは業界内で有名な話ですが、専門性を重視する外資系企業ではとても珍しいキャリアであると思います。2014年に人事責任者として日本ストライカー社にご入社されてから、2021年に代表取締役就任までの流れを教えていただけますでしょうか?
水澤様:
私は2014年に人事部門のリーダーとして入社しました。面接の場で、「会社のカルチャー・組織・ビジネスモデルの変革を力強くリード出来る人を探している」という話を聞き、「大変そうだけれどもやりがいのある仕事」だと感じ、ストライカーへの入社を決意しました。
入社前も入社後も、営業、マーケティング等々、事業に直接かかわる経験はありませんでした。ですから、入社して3年後、手術室装備品を扱うメドサージ事業部(当時)のリーダー就任への打診があったときは驚きもありました。しかし、企業としても個人としても“成長”することを推奨するストライカーの社風にも後押しされ、大きなキャリア転向を実現することができました。
―RGF小林:異色のキャリア転向において直面した課題や困難はありましたでしょうか?
水澤様:
異動直後は「人事しかやってきていない人間にビジネスをリードできるのか」という雰囲気を感じることもありました。そのような周囲の意見、そして自らの経験不足からくる劣等感を一つ一つ克服していくために、特に最初の数カ月は大変な努力をしました。原動力になったのは、自分の可能性を信じて任せてくれたストライカーの期待に応えたいという気持ちと、生まれ持った負けず嫌いの性格です。
人事部門では15人程度のリーダーでしたが、メドサージ事業部長では150人のリーダーとなり、その後は統括事業本部長として職掌が広がり600人を超える部門を率いることになりました。そして2021年4月に日本ストライカーの社長に就任し、現在は1,000人を超える組織のリーダーとなりました。
―RGF小林:期待がやる気に繋がり、持ち前の性格がこの大きなチャレンジを乗り越える重要なポイントだったということですね。
水澤様:
自分自身のこのような経験を踏まえて、リーダーシップとLearning Agilityがあれば色々なキャリアが実現できると強く信じています。また、企業は人で成り立っており、人・組織・カルチャーの強化が会社の将来を決めると言っても過言ではないと思います。ビジョンを掲げ、組織をつくり、メンバーをエンゲージしながら人を育て、結果を出す…そのすべての局面において、人事・人材育成を専門として従事してきた経験を大いに活かせていると感じています。
2. Mission/Value、リーダーシップの重要性
―RGF小林:御社の重要なミッションである、”Together with our customers, we are driven to make healthcare better. (顧客と一体となって、医療の向上を目指します。)”のもと、水澤さんが考える、グローバルな環境下でのリーダーとして大切にしている”資質と行動”を教えていただけますでしょうか?
水澤様:
特にグローバルな環境下でリーダーシップを発揮するために必要な資質は以下の3つだと考えています。
- Intelligence (知識、知性、戦略、等々)
- Courage (勇気)
- Toughness (忍耐力)
ビジネスを成長させていくためには経営管理や戦略立案のように優れた知性が不可欠です。一方で、いくら良い戦略があったとしても実行していく勇気がなければ“絵に描いた餅”になってしまいます。一度勇気を持って実施したあとも困難な環境に直面することがあり、そこでは忍耐が必要になります。上記3つの資質をバランスよく持つことが重要です。
一方でリーダーに必要な具体的な行動は
- Setting the direction : Visionや目標を示すこと
- Building Organizational Capability: そのVisionや目標を達成できる組織を構築すること
- Inspiring people: その組織の中で活躍する人々を鼓舞し、やる気満々な状態にすること
- Developing talent: 変化の激しい環境下で人財を育て続けること
- Delivering result : 結果を出し続けること・約束を守ること
だと思います。リーダーとして強く感じるのは「コミュニケーションの重要性」です。いくら良い戦略があっても、言語化して発信し続けなくては、組織に浸透しないですし、企業のカルチャーも定まらないのではないでしょうか。
3. 中期経営計画「Defy the odds」について
―RGF小林:「コミュニケーションの重要性」のお話が出ましたが、更なる成長のドライブの一つとして経営ビジョンやメッセージを言語化し、定期的に発信しているとお伺いしております。中期経営計画「Defy the odds」について、教えていただけますでしょうか?
水澤様:
私が社長に就任した直後、2022年からの5カ年計画として策定したのが「Defy the odds」です。Defy the odds とは「予想を覆す」「不可能と思われたことをやってのける」「不利な状況下でも挑んでいく」などの意味を持ちます。
日本市場について、海外からは「これ以上の成長は見込めない」「新しいことに挑戦する文化がない」などという評価がありましたが、私たちの行動を変えることによって、その評価を覆したい、という強い思いがありました。5年間で、今までになかった発想や方法を取り入れながら、チャレンジを機会としてとらえるカルチャーをつくり、誰も予想していなかった成長を遂げたい」という思いを込めています。
―RGF小林:具体的な取り組みついて、詳しく教えていただけますでしょうか?
水澤様:
Defy the oddsのもとでは、5つの柱・100を超えるプロジェクトが立ち上がり、多くの社員が組織横断的に取り組んできました。進捗や成果は公開型の定例会議で全社共有もしています。Town Hall Meetingなど、社内行事においても繰り返しDefy the oddsを語り続け、ベストプラクティスを共有するようにしています。社内にもすっかり浸透し、最近は「それはDefy the oddsの考え方だね」、「大変だけどDefy the oddsの精神でやってみよう」などと、社員自ら引き合いに出し、経営メッセージが浸透していることを実感します。ビジネス面でも強い成長軌道に乗り、2026年の最終年度に掲げた目標に向けて順調に推移しています。
4. グローバル人材育成に対する情熱と、現在のグローバル・アサインメントへの取り組み
―RGF小林:昨今では大変珍しい、社員の海外派遣を積極的に行っているとお聞きしております。水澤さんのグローバル人財育成に対する情熱・信念と、御社取り組みの一つである、「グローバル・アサインメント・プログラム」について、お聞きできますでしょうか?
水澤様:
私自身、20代後半の時に半年間アメリカ・ウィスコンシン州で勤務した際に、大きな挫折を味わいました。完全にアウェイの状況のなか、主体性をもって主張する必要性を痛感したことで、「Think globally, Act locally」と「Global mind, Japan pride」という2つの点を深く学びました。
私たちの仕事では、日本国内のみならず、米国ストライカー本社のリーダーを含む国外のステークホルダーも大切なコミュニケーションの相手です。自らの経験をもとに、真にグローバルで活躍できる次世代リーダーを育てるため、昨年から日本の社員を数カ月間、米国本社に派遣し、現地で新製品開発のプロジェクトに深く関わってもらう「グローバル・アサインメント・プログラム」をはじめました。渡航した本人はもちろん、周囲の社員にとってもよい刺激となり、新製品の開発や販売戦略策定に向けて、国境を越えたコラボレーションが盛んになっていることを、大変嬉しく、また心強く感じています。今後も様々な形でグローバル人財の育成に注力していきたいと考えています。
2018年から7年連続、日本における「働きがいのある会社」ランキング ベスト100*に選出。
*「働きがいのある会社」調査は、「働きがいのある会社」の調査・分析を行う専門機関Great Place to Work® Instituteが、世界共通の基準で運営・実施している世界最大規模の従業員意識調査です。
5. フラッグシップ製品・事業
―RGF小林:多くの事業・製品群を持ち、救急から手術、術後のケアまで、トータルソリューションを提供する御社ですが、業界内で注目度が高くよく耳にする、手術支援ロボット「Mako(メイコー)システム」など、注力分野についてお伺いできますでしょうか?
水澤様:
整形外科分野において日本で初めて薬事承認を受けたロボティックアーム手術支援システム「Makoシステム」は、人工股関節/人工膝関節置換手術に対応し、精緻な術前計画に基づき、医師の手技をサポートする大型機械です。日本においても導入が進んでおり、人工股関節手術においては、疼痛の軽減や歩行機能回復の早期化などがエビデンスとして認められ、今年の6月に新設された診療報酬区分に唯一該当する整形外科ロボットとして承認されるなど、その有用性が知られるようになってきています。高齢化社会が進むなか、健康寿命の増進という観点からも、ますます注力したい分野です。
また、ストライカーのミッション「Together with customers, we are driven to make healthcare better.」にもあるように、顧客である医療従事者の皆様と一体となって医療の現場の課題を解決することも重要なことと考えています。こうした観点から、手術室で「廃液」と「サージカルスモーク」を吸引する大型医療機器や救急搬送用の電動式ストレッチャーシステムにも力を入れています。前者は手術室で働くスタッフの安全確保と労務負荷軽減という目的で、後者は救急搬送現場で活躍する救急隊員の身体的負荷軽減に貢献することで、結果的に患者さん、そして医療の向上に貢献できると確信しています。
6. 必要としている人材像
―RGF小林:どのような人材が活躍していますでしょうか?またどのような人材を必要としており、何を期待されておりますでしょうか。
水澤様:
ストライカーでは「誰もがリーダーシップを発揮できる」という信念のもと、グローバル全体で共通の人材開発メソッドとして「リーダーシップ・エクスペクテーション」を明文化しています。経験や立場によって形は異なりますが、それぞれの「リーダーシップ」を発揮してもらうことを期待しており、評価制度とも紐づいています。前述の通り、中期経営計画「Defy the odds」のもと、多種多様なプロジェクトが進行していることに加えて、製品の領域も広がっており、他部門と協業する機会も増えています。このような“One Stryker”の環境においては、各自のリーダーシップを発揮することが何より重要です。自分の業務範囲を狭めず、能動的に様々な仕事に取り組む意欲を持っている人を求め、また、歓迎します。
7. ラストメッセージ
―RGF小林:本日は貴重なお話をありがとうございました。最後に、日本ストライカー社長として描く、「夢と目標」をお聞かせ願います。
水澤様:
日本の医療機器業界を牽引する、卓越したリーディングカンパニーになることです。
ストライカーは、「顧客である医療従事者の皆さんと一体となって、医療の向上に貢献する」というミッションを掲げ、AEDや救急車に搭載される電動ストレッチャーのような救急の領域から、手術室内の無影灯・オペ台・内視鏡・各種ドリル製品や手術支援ロボット、画像診断装置、さらに患者さんの体内で使われるインプラントやカテーテル等々の備品、そして手術後はベッドをはじめとするICU周りの製品までを幅広くカバーし、“Patient Journey”を一貫してサポートできるTotal Healthcare Companyです。そしてそれら製品全般がデジタルテクノロジーと深く関わり、さらに今後はAIの技術も多く取り入れ、様々なイノベーションを日本のヘルスケアマーケットに提供し続けていくことで医療の向上に貢献していく責務を感じています。
社員一人ひとりがミッションのもと献身的に活動してくれていることもあり、ここ数年、日本のビジネスは堅調に成長しています。日本の患者さんのQOL向上のため、日本ストライカーを日本の医療機器業界における真のリーディングカンパニーとして確立させたいと考えています。
Profile
日本ストライカー株式会社 代表取締役社長 水澤 聡 様
2002年青山学院大学経済学部卒業後、三洋電機株式会社に入社し、本社総務・人事グループでキャリアをスタート。マレーシアとタイでの海外勤務を経て、本社で経営企画に従事。2005年にGeneral Electric Internationalに入社し、次世代リーダー育成プログラムを修了後、GEヘルスケア・ジャパンで人事マネジャーを務める。その後、アボットジャパンで人事役職を歴任。
2014年に日本ストライカー株式会社に人事本部長として入社し、同年に取締役に就任。2017年にメドサージ事業統括本部長、2020年には統括事業本部長に職責を拡大。2021年4月、日本ストライカー株式会社の代表取締役社長に就任。現在に至る。
RGFエグゼクティブサーチジャパン
プリンシパルコンサルタント 小林 法人
2006年より18年間、医療機器業界専任のコンサルタントとして数多くの企業・候補者を支援。
日本で生まれ、学生時代をフィリピンで過ごし、アメリカの大学を卒業後、現地の医療機器・製薬商社にてセールス&マーケティングに従事。日本帰国後は、大手人材紹介企業にて2度にわたりヘルスケア部門のチーム立ち上げ経験を持つ。その後、2012年よりRGFエグゼクティブサーチジャパンへ入社。
RGFエグゼクティブサーチジャパンでは、医療機器業界出身という知見・経験を活かし、同チームの主要メンバーとして、Retainer/Contingent、緊急性・ご希望に応じて、営業、マーケティング、薬事、臨床開発、薬事、品質、安全、R&D関連職など幅広いポジションの採用支援に従事。国内およびアジアパシフィックエリアでの経営・管理者層の人材サーチや、海外企業の新規日本法人立ち上げ等で数多くの実績を持つ。
【小林からのメッセージ】
私のモットーは、クライアント企業の「いちファン」として、候補者の方々には「信頼できるパートナー」として共に歩み、質の高いサービスと転職サポートを提供する事です。そして、持続的な信頼関係の構築を常に心がけています。
企業は「人財」によって成り立っており、転職は人生における重要な「分岐点」であると思います。「人財紹介・転職のプロフェッショナル」として、自信と誇りを持って全力でサポートに取り組んでいます。
この18年間、多くの企業や候補者がどのように道を選び、時には誤りながらも、ビジネスチャンスやキャリアを切り開いてきた過程を見て、聞いてきました。あらゆる角度からの採用支援と、意義のある転職の実現に向けて、ぜひ一度ご相談に乗らせてください!
心よりご連絡をお待ちしております。